設立趣意書(案)

「FMいたばし」設立趣意書(案)
—— 知らせる、つなげる、そして災害対策 ——

板橋区内を主な放送エリアとする、区民のための区民によるFM放送局「FMいたばし」を作りましょう。すでに東京には、コミュニティFM局が10局ありますが、残念ながら板橋区にはありません。私たち板橋区民自身の手によるFM放送局を皆さんと一緒に創り上げましょう。

インターネットの時代に、なぜいまさらFMなのですか —— 携帯やスマートフォン、パソコンで、必要な情報は得られるし、日本中、さらには世界中の人々とつながる時代に、前世紀の異物のようなFM放送を利用するのかと思う方もあるでしょう。確かに、インターネットの中に、たくさんの板橋区内の情報が流れています。そして、簡単に板橋区民が情報を発信することもできます。かつてラジオ放送が担っていた大切な役割が、今日、インターネットに担われていることは間違いありませんし、今後もその状況は変わらないでしょう。

それでも、私たち板橋区民にはFM放送局が必要なのです。

その最も大きな理由は災害対応の問題です。2019年9月の台風15号によって、関東地方では千葉県を中心に大きな災害が発生しました。数十万個が長期にわたって停電したり、あるいは屋根が飛ばされたり、日常生活に重大な支障が発生しました。とくに、病気や高齢者の方にとっては命に関わるものでもありました。そこでも、水道水の確保、ブルーシートの配給、お風呂の提供など、身近で切実の生活手段のサービスの提供状況に関する情報は、とても重要でした。そこで活躍したのが木更津市のかずさFMなどのコミュニティFMでした。自らも被災する中で地域情報を発信し続けたのです。

東京はどうでしょう。なによりも震災です。首都直下型のマグニチュード7クラスの地震が30年以内に起きる確率は、70%という政府発表が2013年末に発表されました。板橋区が震災の災害に見舞われる可能性は、ほぼ現実のものとなってきていると言ってもよいでしょう。震災によって私たちがどのような深刻な事態に直面するかは、1995年の阪神大震災、そして2011年の東日本大震災によって目の当たりにしています。インフラが深刻な打撃を受けるということは、同じように複雑なネットワークを持つインターネットやケーブルテレビも生じる可能性が高いと考えるべきです。

停電が起これば、通常のインターネット回線の多くは使えなくなるでしょう。スマートフォンを利用できるのは比較的若い人に限られて、多くのお年寄りは情報を得る手段が失われてしまいます。FM放送はFMラジオと電池さえあれば、十分長い時間利用できる状況取得手段となるのです。この板橋においても、コミュニティFMは、切実に求められているのです。

さらに、このような災害対応としての理由だけで、コミュニティFM放送が求められ、注目されるのではありません。コミュニティFMは、災害時のみ機能すればいいわけではありません。いや、災害の時に大いに役立つためには、経営的にも、平常時、地域の人々に楽しいコンテンツ、役に立つコンテンツを提供していく必要があるのです。その点で知っておくべきことは、いま、若者の間でラジオがかつて無いほどに注目されているという事実です。

例えば、ビデオリサーチ社の調査結果によれば、東京駅35キロ圏内の20代男性の、一人一日のラジオ聴取時間は2012年4月の65分から2013年4月には99分に増加しています。ラジオが若者に1日1時間半も語りかける手段となることはすごいことで、若者が新たにラジオというメディアに注目し始めていることを示しています。

一方、インターネットは、若者には100%に近い普及率となっているものの、60歳代になると70%台、65歳代になると60%台、70歳代では40%、80歳代では20%に落ちてしまいます(総務省「平成23年通信利用動向調査」)。板橋区の高齢化率は年々増加しており、大切な情報がインターネットにだけ流れるとしたら、お年寄りが情報にたどり着けなくなってしまいます。一方、ラジオは、今身近になかったとしても、おとりよりでも一度は触れ、操作したことのあるメディアです。

FMいたばしは、インターネットに依存しないメディアとして、災害時のみならず、平常時においても、このように大切な「知らせる」力を発揮することができるのです。

さらに、FMいたばしは、インターネットと違った形で、人々をつなげることができます。それは、人と人とのリアルな「つながり」を作る力を持っているということです。これも過去の災害から日本人が学んだ大切なことです。

阪神大震災のとき、それまで日陰の言葉だった「ボランティア」が脚光を浴び、人と人とが助け合い支え合うことの大切さを行動で表す言葉となりました。そして、東日本大震災では、さらにそれが、つながりとか絆などの言葉とともに、より深い言葉と行動につながっていきました。

FMいたばしは、人々が無理をせずに実際に行き交える範囲のつながりを容易に広げる手段となります。地域にある情報が、地域に届けられます。地域の人々の声が、同じ地域に届けることができます。ラジオなので音と声が媒体なのですが、人々の「顔」を感じることができるメディアとなることができるのです。

こうして作られたつながりは、大きな災害など、人々が支え合わなければならないときに大きな力を発揮するはずです。

また、板橋区には102の商店街があり、製造業出荷額が東京都区部において最も大きな区で、こうした商工業の基盤がしっかりと機能し、発展することは区の活性化にとって大きな意味を持っています。FMいたばしがもたらす、若者からお年寄りまで、様々な階層に情報を伝える機能は、地域の安心、安定した活力ある地域社会を作ることに寄与し、商工業活動の持続可能性の力強い支えとなります。

区内の商工業は、たとえ震災があったとしても、それを乗り越えて、この板橋区で持続していくことが必要です。安定した活力ある地域社会は、その大切な前提となります。FMいたばしは、区内の商工業の皆様と固い結びつきを持って、支え、支えられる関係を気づいていくことが不可欠となります。

来年、2020年には、東京で二度目のオリンピックが開催されます。それを契機に、東京はまた新たな姿をみせることになるでしょう。板橋区もまた新たな姿を模索していくでしょう。さらにコミュニティとしての一体感が作られるべきであり、そうした新しい板橋の姿を世界の人々に見ていただく機会、感じていただく機会にしていかなければなりません。FMいたばしは、そのように躍動する東京、飛躍する板橋において、確かな存在感を持った放送局となるべく、全力を挙げるものです。

多くの個人、企業の皆さんがこの事業に参加されることを心から呼びかけるものです。

 

2019年9月

呼びかけ人 鷲田豊明